コオロギの身体部位別に分けて咀嚼した際の食感のオノマトペを実験で抽出し,コオロギの身体にリマッピングした図.牛や豚などの部位別(文字の大きさはPC1のスコアと比例している)

コオロギの身体部位別に分けて咀嚼した際の食感のオノマトペを実験で抽出し,コオロギの身体にリマッピングした図.牛や豚などの部位別(文字の大きさはPC1のスコアと比例している)

昆虫の身体部位別の食感の違いをオノマトペを用いて明らかにし,その違いを可視化する手法を提案した.オノマトペを介在させることで食感という主観的な感覚を計測する事が可能になった.

世界の食糧問題の対策として昆虫食が有益であると2013 年にFAOが発表して以来,昆虫食への関心が高まっている.昆虫食は栄養食としての側面が注目される一方で,一つの食材として活用しようという動きがある.しかし,食材として昆虫を活用する際に肉製品のような部位わけは十分に検討されていない.本研究では,昆虫の食感に注目し,オノマトペを用いて身体部位別の食感の違いを明らかにし,その違いを可視化する方法を提案した.乾燥コオロギを5つの部位に分け,それぞれの食感をオノマトペで表現する実験を行なった.その結果,25種類のオノマトペが抽出された.抽出したオノマトペに対して印象評価実験を行い,主成分分析したところ,頭部と羽根部に特徴的な食感がみられることが示唆された.これらの実験結果をもとに食感の違いを可視化する2つの方法を提案した.


Since the FAO announced in 2013 that entomophagy would be beneficial in addressing the world's food problems, interest in entomophagy has been increasing. On the other hand, there is a movement to utilize insects as an ingredient. However, the use of insects as a foodstuff has not been sufficiently examined in terms of their parts, as is the case with meat products. In this study, we focused on the texture of entomophagy, and proposed a method to clarify and visualize the differences in texture by body part using onomatopoeia. We divided a dried cricket into five parts and conducted an experiment to express the texture of each part using onomatopoeia. As a result, 25 types of onomatopoeia were extracted. An impression evaluation experiment was conducted on the extracted onomatopoeias, and a principal component analysis indicated that the head and wings had characteristic textures. Based on the results of these experiments, we proposed two methods to visualize the differences in texture.

乾燥コオロギを5つの身体部位(左から,頭部・中体節・腹部・後脚・羽根)に分解した様子(試料提供:合同会社TAKEOさん)

乾燥コオロギを5つの身体部位(左から,頭部・中体節・腹部・後脚・羽根)に分解した様子(試料提供:合同会社TAKEOさん

身体部位別に分けられたコオロギを試食し,咀嚼時に感じた食感をオノマトペで回答してもらう実験の様子.

身体部位別に分けられたコオロギを試食し,咀嚼時に感じた食感をオノマトペで回答してもらう実験の様子.

食感の心的イメージを数値的に比較するため,それぞれのオノマトペの心的イメージを各指標について5段階のSD 法で評価する実験を行った.実験の結果を主成分分析し,身体部位別の食感オノマトペ分布を確率楕円で表したものが上図.羽根や頭部に特徴的な食感が見られることが示唆された.

食感の心的イメージを数値的に比較するため,それぞれのオノマトペの心的イメージを各指標について5段階のSD 法で評価する実験を行った.実験の結果を主成分分析し,身体部位別の食感オノマトペ分布を確率楕円で表したものが上図.羽根や頭部に特徴的な食感が見られることが示唆された.

ペンフィールドが描いた体性感覚野ホモンクルス表現を参考に,食感オノマトペの第一・第二主成分得点に応じて5つの身体部位を拡大・縮小した3Dモデルを作成した.食感の多様性を視覚に訴えるだけではなく.手で触れて触覚でも体験できるよう試みた.

ペンフィールドが描いた体性感覚野ホモンクルス表現を参考に,食感オノマトペの第一・第二主成分得点に応じて5つの身体部位を拡大・縮小した3Dモデルを作成した.食感の多様性を視覚に訴えるだけではなく.手で触れて触覚でも体験できるよう試みた.

上図を実際に3Dプリントすることで,もし食用コオロギが遺伝子組み替えされより食感に特化した食材となった場合の未来を感じることができる.(SFC TOUCH LAB exhibition 2020 出展)

上図を実際に3Dプリントすることで,もし食用コオロギが遺伝子組み替えされより食感に特化した食材となった場合の未来を感じることができる.(SFC TOUCH LAB exhibition 2020 出展)